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読書メモ:ファビエンヌ・ブルジェール(2013/2014)『ケアの倫理 ネオリベラリズムへの反論』(原山哲・山下りえ子訳)白水社文庫クセジュ
西見奈子『フロイトの灯』の副読本として、ファビエンヌ・ブルジェール(2013/2014)『ケアの倫理 ネオリベラリズムへの反論』(原山哲・山下りえ子訳)を読んだ。近年盛んに論じられて出版されている「ケアの倫理」に関する書籍の一つ。4月に行った神保町ブックフェスティバルの白水社のブースで購入して、積ん読になっていたもの。 *** 著者の主張は比較的シンプルで、合理的・個人主義的な道徳と、関係性・気づかい・社会的絆によって生成される倫理とを対置させ、ケアとはまさに倫理の問題であり、伝統的にケアは女性のものとされてきたことを指摘することで、逆説的にこれを女性だけのものであることから解放することを狙うものである。 「心づかいとは、弱い人間が言葉を話すようになり、依存しない状態になれる可能性に関心をもつことだ。しかし、弱い人間は、自分になされる配慮にどう応えるかは自由である。」(p.100)というのが著者の主張のコアであると思ったし、心理臨床のコアでもあると思うが、依存と自律の複雑な関係は一筋縄ではいかないことは、臨床実践を行う者ならばみな実感するところ

心理臨床オフィス ポーポ
4 日前読了時間: 3分


読書メモ:ブランケンブルク(1971/1978)『自明性の喪失――分裂病の現象学』
破瓜型(解体型)統合失調症の本態は、自分にも他者にも生命にもこの世界にも親しみを持ちにくいこととし、これを「(自然な)自明性の喪失」と名付けたブランケンブルクの書。今回、たまたま必要があって読んだのだが、院生時代以来なので20年ぶりぐらいか。あの頃よりは面白く読めた気がする。 *** アンネ・ラウという20歳の女性の症例から、統合失調症における「自明性の喪失」がどのようなものであるのかを多面的に分析する。 自明性を失うと生命に親しめ「ない」、他者との間が「ない」ゆえ間主観性が成立し「ない」、したがってコモン・センスが成り立た「ない」、というように、否定の形でしか存在を記せないのが自明性であり、経験論的にも超越論的にも”自分”を支えるようなものである。 大きなものに根ざしつつ自分を分けて析出していくという点では、木村敏の存在構造論はもちろんだが、河合隼雄が『心理療法序説』において心理療法の一つの極みとして仄めかした自然(じねん)モデルを想起させるところがある。「コモン・センス」論としては中村雄二郎『共通感覚論』なども思い出す。そして、國分

心理臨床オフィス ポーポ
6月26日読了時間: 2分


読書メモ:野間俊一(2012)『身体の時間——<今>を生きるための精神病理学』筑摩書房
うつ病、解離、ASD、摂食障害、自傷の症状のあり方の時代的変遷から、現代の時代精神を「コントラ・フェストゥム」として取り出す。 「コントラ・フェストゥム」とは、精神科医・木村敏の「ポスト・フェストゥム」「アンテ・フェストゥム」「イントラ・フェストゥム」から着想されたもの。これらは生命の祝祭性と、それとの関係の取り方によって人間の存在構造を分類したもので、それぞれ、完了態の中に生きる様式、未決の可能態に生きる様式、生命の噴出そのものに生きる様式である。このうち「イントラ・フェストゥム」は量的なものであるので、対極にある生命から疎隔された状態を措定することができる。これを野間は「コントラ・フェストゥム」と名付け、現代人の特徴であるとする。 *** ここで面白いのはトラウマにおけるフラッシュバックの取り扱い方で、これはもちろん主観的体験としては苦しいものであるのだが、コントロールしようとすると「コントラ」となって余計に反逆される。そうではなくて、「イントラ・フェストゥム」の現れであると捉えることで、受動から能動へと転じる主体発現の契機ともしうると主

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6月20日読了時間: 2分


それは幻ではない――西見奈子『フロイトの灯 現代精神分析入門』
精神分析家によるフロイト理論の解説書。優しく丁寧だが足腰の強さを感じさせる語り口で、読むうちに段々と地響きのような蝉の声のような、姿なき者の声のようなものがズーンと響き、次第に大きくなってくる気がした。気のせいかと思ったが、それは気のせいではないことが終盤にさしかかるにつれ分かってくる。 *** 本書では、フロイトのヒステリー理論について、それがトラウマ(実際に生じた外傷体験)によるものであるとした初期理論(「誘惑理論」)とその放棄について語る。ヒステリー症状は女性が外傷体験を負ったから生じるのではなく、外傷体験を負ったことにして症状を出し心身を守ることを無意識が選んだのではないか、という理論的転換である。 その上で、誘惑理論を放棄したからこそ作り上げることのできたエディプスコンプレックスという考え方について論じられていくが、そこに一本通っているのは人間にとって性愛とは何か、という視点である。 *** 精神分析の性愛理論はあるところから急に受け付けなくなるところが私にはあって、エディプスコンプレックスについても、子による母親への愛と父親への

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6月18日読了時間: 5分


読書メモ:ウィニコット(1965/2022)『成熟過程と促進的環境』(大矢泰士訳)岩崎学術出版社
対象関係論のメラニー・クラインの後継者でありながら、それにとどまらず自らの理論を展開させていったウィニコットの論文集。「偽りの自己・本当の自己」「一人でいられる能力」などウィニコットの代表的理論を知ることができ、子どもの心理臨床を学ぶうえでは『遊ぶことと現実』等とともに必読であると思われます。 *** クラインとともに乳幼児期の心的発達の重要性を説いたものの、クラインほどには内界のファンタジーに依らず、タイトルにあるように「促進的環境」を重視したウィニコット。養育者に依存しながら漸進的に心理的自立が進むとウィニコットは考えますが、本書の白眉は以下の点にあると読みました。 イド衝動が有意義になるのは、それが自我生活の中に包容(コンテイン)されるときだけである、という点については一般的に同意を得られると思う。イド衝動は、弱い自我を混乱させ、強い自我を強化する。イド-関係は、自我-関係性の枠組みのなかでおこるとき、自我を強化する、と言える。もしこのことを受け容れるなら、一人でいられる能力の重要性も理解されるはずである。乳幼児が彼自身のパーソナルな生

心理臨床オフィス ポーポ
6月15日読了時間: 3分


大衆芸能(ポップカルチャー)としての歌舞伎の死――御名残五月大歌舞伎と大阪松竹座の閉館
大阪松竹座へ御名残五月大歌舞伎を見に行きました。昼の部と夜の部と一回ずつ。 ご存じの方も多いかと思いますが、大阪松竹座は5月26日をもって閉館となりました。その名残惜しさをこめた演目。 *** 私は歌舞伎には疎く、どちらかというと敬して遠ざけていたところがあったのですが、実際に見て、「なにこれすごい面白いじゃん!早く教えてよ!!」と言いたくなるような、大変楽しい体験でした。 演目は昼の部も夜の部も、時代物・世話物・所作事の3つ。時代物はサーカスのような派手な演出や身体能力に驚き、世話物では腹を抱えて笑い、所作事の美しさに見入る。『心中月夜星野屋』では舞台装置の美しさ第二幕の宵闇の橋!)にも本当に感じ入りました。 江戸の浮世絵(役者絵)の機能もよくわかって、私も思わずブロマイドを買って帰りました。見るたびに蘇る歌舞伎体験。 *** ところで、実際に歌舞伎を見に行ってわかったことがありました。松竹座の客、とにかくよく喋る!役者が出る度、家族関係を事細かに喋り、足拍子を鳴らせば「キレッキレや!」と大喜び。所作事では一緒に手を振る。ギャグのオチ

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6月1日読了時間: 3分


面接枠の空き状況について
新年度に入り、面接枠に若干空きが出ました。金曜、土曜、月曜に空きがあり、その他の曜日も日によって、時間帯によってお越しいただけます。 ご都合が合いにくかった方はもちろん、来られるかどうか迷っておられる方も、お気軽にお問い合わせください。 (2026.4.27)金曜に空きが出ましたのでその旨、追記しました。

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4月25日読了時間: 1分


魔女、人間になる――映画『ハムネット』(ネタバレあり)
映画『ハムネット』 を見ました。 *** イギリスの田舎(ストラトフォード)に住む農家の娘がジェントリ階級の息子と結婚し、子どもが生まれる。夫は食い扶持を得るためにロンドンへ。残された母と長女、双子の次女・長男は父の帰りを楽しみに、草花に親しみながら暮らすのだが、一家を悲劇が襲う。子の一人が亡くなってしまうのだ。この悲劇がその後、家族に取らせた手段とはなにか。それが劇作家・シェイクスピアの作品「ハムレット」誕生につながる——。 主演女優のジェシー・バックリーがアカデミー賞を獲得したこともあり注目される本作ですが、家族のすれ違い・エディプス的葛藤と創造性の関係・母との分離・女性同士の連帯・ 演じることによる喪の作業 など様々なテーマが重層的に含まれる物語でした。 *** 中でも私が面白いなあと思ったのは、ジェシー・バックリー演ずるアグネス。鷹を操ったり薬草を得たり、村では”魔女の娘”と噂される存在です。アグネスの母も魔女と呼ばれており、おそらく出産にまつわる何かで命を失っています。アグネスは母のように魔女として振る舞い、母の言葉を復

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4月18日読了時間: 5分


花が咲くということ
オフィスの近くの桜が咲きました。後ろのシュロの木と合わせて、なんだかハッといつも見上げてしまう桜です。 咲いたと言えば、以前に買ってきた際のことをブログでご紹介したエケベリアにも花が咲きました。細く伸びて吊り下がったようになっているのが花です。 実はこのエケベリア、順調に育っていたものの… 去年の夏の暑さが堪えたか、周りの葉がジュレてしまって、株の大きさが半分ほどになってしまったのでした。 過去の写真を見ながら今にして思えば、株に対して鉢が深すぎ、またウォータースペース(土から鉢の縁までの空白)を取りすぎていて、しかも暑かろうと成長期でもないのに水を上げすぎていて、蒸れてジュレる要因がたくさんありました。かわいそうなことをしました。 生き残った中央部を小さくて通気の良い素焼きの鉢に植え替え、水やりも控えめにしていたところ…無事に花が咲いてくれました。 花が咲くのは断末魔と言うか、生命をつなぐ必死のアピールでは??などと警戒心も解けませんし、花でエネルギーを消耗させないほうがよいとも聞きますが、まずはここまで蘇った生命力を寿ぎたいと思い

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4月6日読了時間: 2分


箱庭体験コースについて
先日お知らせしました通り 、当オフィスで箱庭療法を行えるようになりました。 箱庭とはどのようなものか、体験してみたい方向けに、3回のコースを設けました。概要は以下のとおりです。 *** <箱庭体験コース> 【回数】全3回(1回50分。日程はご相談の上、決定します。) 【料金】15,000円(5,000円✕3回分。初回時にお支払いください。) 【内容】箱庭制作を行い、心の動き方の傾向やこれからの心の発展可能性についてともに吟味します。3回連続で制作することで、多角的な心の状態を知ることができ、心の変化を実感することができます。 *ご不明な点がありましたら、メール等でお尋ねください。 *** お申し込みは、 フォーム または メール(hnkmti@gmail.com )からお願いいたします。 模擬制作事例 通常のカウンセリングに箱庭療法を取り入れることもできますし、箱庭体験コースから、必要であればカウンセリングを始めることもできますので、ご要望があればお知らせください。 リアル・マインクラフトみたいで楽しいものですので、お気軽にどうぞ

心理臨床オフィス ポーポ
2月2日読了時間: 1分


箱庭療法を始めました
面接室に箱庭療法のセットを設置しました。ミニチュアはこれからまだまだ充実させていく予定ですが、今後の面接では箱庭療法も行っていくことになります。 *** 箱庭療法とは、砂箱の中にミニチュアを置いていき、自分の世界を表現するもので、心理療法の一環として行われます。教育や医療の現場などで心のケアのために広く取り入れられています。近年、ドラマやアニメなどで取り上げられることもあるので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。 *** 苦しいことも楽しいことも、無理に思い出して言葉にしなくとも、箱庭を置くことで心が動いて生き方のバランスが変わる場合があります。また、自分の中にある創造性に出会って、世界を切り開いていく勇気を得ることができる場合もあります。 夢分析 や描画にも似ていますが、触感が大きく刺激され、身体感覚が動かされるところが特徴的です。 *** 当オフィスで心理療法を受けられる場合、言葉でのやり取りのみで進める方法・描画を取り入れる方法・夢分析を行う方法などがありましたが、ここに箱庭療法を取り入れる方法が加わることになります。

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1月17日読了時間: 2分


誰にとっても人生は突然――映画『カーテンコールの灯(あかり)』
現在上映中の映画 『カーテンコールの灯』 は、打撃を受けた人生がどのように再生していくのかを丁寧に描いた作品です。 *** 建設作業員として働いている男性・ダンが主人公。彼は作業中に激昂してしまい、それをたまたま見かけた女性に声をかけられ、地域の小さな劇団に誘われます。一...

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2025年9月1日読了時間: 6分


ずっと前から 探し続けた記号(しるし)を探そう
人生の前半にばらまいた様々な断片を、拾い集めるような日々を送っています。 「やり直す」でも「あの頃に戻る」でもなく、断片を拾ってもう一度ちゃんとくぐり抜ける、というような体験。別に輝かなくともよい体験。

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2025年5月17日読了時間: 1分


訳書が刊行されました
3/13に、訳書が刊行されました。 ゲリー・L・ランドレス著『プレイセラピー 関係性の営み 原著第4版』(日本評論社) 、大学院時代の研究会仲間との共訳です。タイトルになっている“プレイセラピー”とは主に子どもを対象とした遊びによる心理療法のこと。...

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2025年3月14日読了時間: 4分


人の奥底にある温かいものへの信頼――映画『スクール・オブ・ロック』(ネタバレあり)
映画『スクール・オブ・ロック』を見ました。公開当時に見て以来ですので、およそ20年ぶりの鑑賞でしょうか。有名作品ですので、ご覧になった方も多いかと思います。とにかく楽しくて元気が出る映画、という記憶でしたが、果たしてそれはその通りでした。...

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2025年2月8日読了時間: 3分


ありがとう、さようなら
昨日で閉館となったシネマート心斎橋に行ってきました。最終日には行けなかったので、その前日に。 *** 最後は、イーニドソーダを飲みながら韓国映画『ノンストップ』を鑑賞するという、シネマートを凝縮!みたいな過ごし方を。 *** かってに復館を期待していた 旧テアトル梅田...

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2024年10月25日読了時間: 1分


「おもしろいからだと答える」
当オフィスで提供している心理療法の形態として、描画療法というものがあります。文字通り、絵を描くことによって心を癒やす方法です。何を描くのか、どのように描くのかは様々であり、描く人の必然性に応じて、それぞれの方法にたどり着くものです。 ***...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年10月21日読了時間: 3分


漂うものをつかまえる
無事に出張から戻り、10月15日(火)より通常通り開室しています。 *** 今回は、鳥取・米子での学会参加のための出張でした。米子へは、以前に同じ学会に参加するために行って以来なのでおそらく12年ぶり。記憶がいい具合にすっかり抜けていて、まるで初めて訪れたかのような新鮮さ...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年10月18日読了時間: 1分


言葉の力の光と影――映画『ビーイング・チャーリー』に見る、意志によるコントロールの不可能性について(ネタバレあり)
映画『ビーイング・チャーリー』は、『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナーが監督した、ある青年の物語です。 *** 主人公はチャーリー、父は海賊役を得意にしていた俳優で、現在カリフォルニア州知事に立候補して選挙戦の真っ只中です。母はそのような父の活動に付き合いながら、どうも...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年8月2日読了時間: 5分


小さな定住革命――雑草は抜かれなくてはいけないの?
このところ私が心奪われている、当オフィス卓上のエケベリアの鉢ですが、脇からなにかの草が生えてきました。この土は、植わっていた木が枯れたのでベランダに放置していた鉢から拝借したもの。ベランダに置いている間に、どこかから種が紛れ込んだのでしょうか。...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年7月12日読了時間: 2分
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