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読書メモ:野間俊一(2012)『身体の時間——<今>を生きるための精神病理学』筑摩書房
うつ病、解離、ASD、摂食障害、自傷の症状のあり方の時代的変遷から、現代の時代精神を「コントラ・フェストゥム」として取り出す。 「コントラ・フェストゥム」とは、精神科医・木村敏の「ポスト・フェストゥム」「アンテ・フェストゥム」「イントラ・フェストゥム」から着想されたもの。これらは生命の祝祭性と、それとの関係の取り方によって人間の存在構造を分類したもので、それぞれ、完了態の中に生きる様式、未決の可能態に生きる様式、生命の噴出そのものに生きる様式である。このうち「イントラ・フェストゥム」は量的なものであるので、対極にある生命から疎隔された状態を措定することができる。これを野間は「コントラ・フェストゥム」と名付け、現代人の特徴であるとする。 *** ここで面白いのはトラウマにおけるフラッシュバックの取り扱い方で、これはもちろん主観的体験としては苦しいものであるのだが、コントロールしようとすると「コントラ」となって余計に反逆される。そうではなくて、「イントラ・フェストゥム」の現れであると捉えることで、受動から能動へと転じる主体発現の契機ともしうると主

心理臨床オフィス ポーポ
3 日前読了時間: 2分


それは幻ではない――西見奈子『フロイトの灯 現代精神分析入門』
精神分析家によるフロイト理論の解説書。優しく丁寧だが足腰の強さを感じさせる語り口で、読むうちに段々と地響きのような蝉の声のような、姿なき者の声のようなものがズーンと響き、次第に大きくなってくる気がした。気のせいかと思ったが、それは気のせいではないことが終盤にさしかかるにつれ分かってくる。 *** 本書では、フロイトのヒステリー理論について、それがトラウマ(実際に生じた外傷体験)によるものであるとした初期理論(「誘惑理論」)とその放棄について語る。ヒステリー症状は女性が外傷体験を負ったから生じるのではなく、外傷体験を負ったことにして症状を出し心身を守ることを無意識が選んだのではないか、という理論的転換である。 その上で、誘惑理論を放棄したからこそ作り上げることのできたエディプスコンプレックスという考え方について論じられていくが、そこに一本通っているのは人間にとって性愛とは何か、という視点である。 *** 精神分析の性愛理論はあるところから急に受け付けなくなるところが私にはあって、エディプスコンプレックスについても、子による母親への愛と父親への

心理臨床オフィス ポーポ
5 日前読了時間: 5分


読書メモ:ウィニコット(1965/2022)『成熟過程と促進的環境』(大矢泰士訳)岩崎学術出版社
対象関係論のメラニー・クラインの後継者でありながら、それにとどまらず自らの理論を展開させていったウィニコットの論文集。「偽りの自己・本当の自己」「一人でいられる能力」などウィニコットの代表的理論を知ることができ、子どもの心理臨床を学ぶうえでは『遊ぶことと現実』等とともに必読であると思われます。 *** クラインとともに乳幼児期の心的発達の重要性を説いたものの、クラインほどには内界のファンタジーに依らず、タイトルにあるように「促進的環境」を重視したウィニコット。養育者に依存しながら漸進的に心理的自立が進むとウィニコットは考えますが、本書の白眉は以下の点にあると読みました。 イド衝動が有意義になるのは、それが自我生活の中に包容(コンテイン)されるときだけである、という点については一般的に同意を得られると思う。イド衝動は、弱い自我を混乱させ、強い自我を強化する。イド-関係は、自我-関係性の枠組みのなかでおこるとき、自我を強化する、と言える。もしこのことを受け容れるなら、一人でいられる能力の重要性も理解されるはずである。乳幼児が彼自身のパーソナルな生

心理臨床オフィス ポーポ
6月15日読了時間: 3分


2026年が明けました
2026年が始まりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 *** 本日より、通常通り開室しております。休室の間にいただきましたお問い合わせにつきましては、順次ご返答いたしております。 *** 今年の初読了は、 北村紗衣・著『「名作」と友達になる 学校では教えてくれないシェイクスピア』(朝日出版社) 。男子高校生が、シェイクスピア研究者にしてフェミニスト批評家の集中講義を受ける!最後は高校生がシェイクスピア作品を批評するところまでたどり着きます。 映画初観了は溝口健二・監督『残菊物語』。個人が主体となるのに“家(イエ)”がどのように作用するのか。近代的な主体性を持った女性が男性とソウルメイト的バディになるとはどのようなことか。狙って観たわけではないのですが、実は上記のシェイクスピア本と似たようなテーマ性を持っているのではと思いながら鑑賞しました。 *** どうか良い年となりますように。

心理臨床オフィス ポーポ
1月5日読了時間: 1分


訳書が刊行されました
3/13に、訳書が刊行されました。 ゲリー・L・ランドレス著『プレイセラピー 関係性の営み 原著第4版』(日本評論社) 、大学院時代の研究会仲間との共訳です。タイトルになっている“プレイセラピー”とは主に子どもを対象とした遊びによる心理療法のこと。...

心理臨床オフィス ポーポ
2025年3月14日読了時間: 4分


人の奥底にある温かいものへの信頼――映画『スクール・オブ・ロック』(ネタバレあり)
映画『スクール・オブ・ロック』を見ました。公開当時に見て以来ですので、およそ20年ぶりの鑑賞でしょうか。有名作品ですので、ご覧になった方も多いかと思います。とにかく楽しくて元気が出る映画、という記憶でしたが、果たしてそれはその通りでした。...

心理臨床オフィス ポーポ
2025年2月8日読了時間: 3分


夏顔と冬顔
夏と冬をまたいで 多肉植物・エケベリアは冬と夏とでは表情が変わって、これを「夏顔」「冬顔」と呼ぶこともあるそうです。 この写真で言うと、外側の方の長くてツヤツヤしている葉が夏に進展したもの、中央に近い毛が生えて立っている葉が10月以降にに育ったものです。秋から冬に育った...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年12月23日読了時間: 1分


「おもしろいからだと答える」
当オフィスで提供している心理療法の形態として、描画療法というものがあります。文字通り、絵を描くことによって心を癒やす方法です。何を描くのか、どのように描くのかは様々であり、描く人の必然性に応じて、それぞれの方法にたどり着くものです。 ***...

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2024年10月21日読了時間: 3分


小さな定住革命――雑草は抜かれなくてはいけないの?
このところ私が心奪われている、当オフィス卓上のエケベリアの鉢ですが、脇からなにかの草が生えてきました。この土は、植わっていた木が枯れたのでベランダに放置していた鉢から拝借したもの。ベランダに置いている間に、どこかから種が紛れ込んだのでしょうか。...

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2024年7月12日読了時間: 2分


育てたような気持ち
以前記事にしたエケベリア、順調に成長しています。葉の上に光るのは雨露。葉の層が重なっていき、いくら見ても見飽きません。根がたくさん張って鉢が狭くなったようでしたので、深い鉢に植え替えました。 なお、本記事タイトルは、敬愛する現代詩作家・荒川洋治の著作『読んだような気持ち』へ...

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2024年6月28日読了時間: 1分


満開宣言もしくは“ようやく人間”宣言
すっかり春ですね。日中は春を通り越したかのような気温です。 *** 当オフィスホームページ内「ポーポについて」に、著書・訳書に関して記載しました。これまで、自著についてはどこか気恥ずかしさがあり積極的には公表していませんでした。しかし、内容については未熟なところが多くあるも...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年4月12日読了時間: 1分


我々は他ならぬ私-たちである
心の中を覗いたり、耕したりする方法の一つに、風景構成法と呼ばれるものがあります。このブログでも、何度か紹介したことがあります。 記事:カメラロールを眺めてみよう 記事:消えるものは消えるのか *** この風景構成法に関する本が誠信書房より出版されまして、私も一章、執筆しまし...

心理臨床オフィス ポーポ
2023年10月28日読了時間: 1分


mobilityの獲得と「私」の自由-須賀敦子『ユルスナールの靴』について
きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。 須賀敦子の著作『ユルスナールの靴』はこのような印象的な文章から始まる。ユルスナールとはベルギ...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年9月13日読了時間: 3分


「人の心などわかるはずがない」
思うところあって、河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫)を読み返していました。 河合隼雄と言えば日本における臨床心理学の泰斗、臨床実践や大学での指導の一方、旺盛な執筆活動や講演を行って、本邦にカウンセリング(心理療法)を根付かせた立役者の一人と言えます。...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年8月18日読了時間: 5分


夢分析について
当オフィスでお引き受けできることの一つとして、「夢分析」というものを挙げています。ここでいう「夢」とは、寝ている間に見る、あの「夢」のことです。 心理療法において夢を取り扱うということについては、馴染みがある方とそうでない方がおられるのではないかと思います。 ***...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年8月7日読了時間: 5分


魂を打ち震わせるような表現―映画『寛解の連続』について
これがあったから死の淵からなんとか引き返してこられたと思うような、魂を打ち震わせるような表現に出くわすことがある。これはもちろん万人に共通するものではなく、いつ何と出会うか、それによって自分に何が起こるかは無数の組み合わせがあり、誰にも予想もできない(だからこそそれは、心で...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年7月19日読了時間: 6分


季節〔とき〕が流れる、城寨〔おしろ〕が見える、
無疵〔むきず〕な魂〔もの〕なぞ何処にあろう? アルチュル・ランボオ「幸福」(中原中也 訳)

心理臨床オフィス ポーポ
2021年4月3日読了時間: 1分


1周年を迎えました
心理臨床オフィス ポーポを立ち上げてから、3月15日で一年が経ちました。 この一年は、どなたにとっても苦難の多いことだったでしょう。しかし本オフィスについて申せば、これまで教わってきたものを、自分が主体となって組み合わせ、有機的に生かしていくというなんとも言えない得難い経験...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年3月16日読了時間: 1分
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