おとぎ話と近鉄沿線文学――小説『いかれころ』『満月と近鉄』
- 心理臨床オフィス ポーポ

- 2 日前
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斎藤美奈子の、各都道府県に関連する文学作品を紹介する連載『旅する文学』の影響で、近鉄沿線文学を2つ読んだ。大阪府と奈良県にまつわる作品ということになるのだが、ポーポは大阪にあるので大阪のことをより知ろうという心意気はわかりやすい。
ではもうひとつの作品について、なぜ奈良を選んだのかというと、ポーポも上本町という街にあって立派に近鉄沿線の文化の中にあるということと、諸事情により奈良向いて近鉄電車に乗る機会が多くあって、土地勘と言うか、独特の空気感をそこに感じているということから。
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三国美千子『いかれころ』は、大阪南部、いわゆる河内地方の農家の話が4歳の女の子の目線を通して語られる。土地からも家族の縁からも抜け出したいとみんなが思いながらも、一方ではコミュニティ外から来た人間をどうしても排除してしまうという、内面化された価値観というものの根深さを見せつけるような作品。そういった地縁血縁やいつの間にかインストールされていた価値観みたいなものを捨てきれないところに人間というものの悲しみがある。4歳の子ども、家というものが守りにもなり枷にもなるという分岐点にあるので、家にも家の外のコミュニティにも一定の距離感を持って語れるという独特の存在感。
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前野ひろみち『満月と近鉄』は、近鉄奈良駅~生駒駅間の物語。"マッシュアップ!「ランボー怒りの脱出」✕「大化の改新」”といった趣の「ランボー怒りの改新」もいいのだが、「ナラビアン・ナイト 奈良漬商人と鬼との物語」がとてもいい。人間が動物になり、動物が人間になるという話は各地のおとぎ話や説話にあるが、人がどうしてそういった物語を生み出してしまうのか、この話を読んでとてもよくわかった。私が思うに、たぶん、人間が宇宙にすっ飛んでいってしまわないためなんだけど、私がどうしてどのように思ったかは、本を読んでぜひ確かめてみてください。
本全体も、虚実皮膜の不思議なところを攻めていて、時間と世界の輪が閉じる読後感も心地よいです。




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