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おとぎ話と近鉄沿線文学――小説『いかれころ』『満月と近鉄』
斎藤美奈子の、各都道府県に関連する文学作品を紹介する連載『旅する文学』の影響で、近鉄沿線文学を2つ読んだ。大阪府と奈良県にまつわる作品ということになるのだが、ポーポは大阪にあるので大阪のことをより知ろうという心意気はわかりやすい。 ではもうひとつの作品について、なぜ奈良を選んだのかというと、ポーポも上本町という街にあって立派に近鉄沿線の文化の中にあるということと、諸事情により奈良向いて近鉄電車に乗る機会が多くあって、土地勘と言うか、独特の空気感をそこに感じているということから。 *** 三国美千子『いかれころ』は、大阪南部、いわゆる河内地方の農家の話が4歳の女の子の目線を通して語られる。土地からも家族の縁からも抜け出したいとみんなが思いながらも、一方ではコミュニティ外から来た人間をどうしても排除してしまうという、内面化された価値観というものの根深さを見せつけるような作品。そういった地縁血縁やいつの間にかインストールされていた価値観みたいなものを捨てきれないところに人間というものの悲しみがある。4歳の子ども、家というものが守りにもなり枷にもなる

心理臨床オフィス ポーポ
8月21日読了時間: 2分


足の裏から立ち上るもの――斎藤美奈子『旅する文学』と連載完結記念動画
文芸評論家の斎藤美奈子が月1回、朝日新聞の紙面に書き続けていた連載が完結した。「旅する文学」というのがそれで、47都道府県にちなんだ文学作品をいくつかセットにして、土地の空気から文学を歩き直し、その土地の文学からあらためて土地の文化を読み直そうという試み。2026年8月3日現在、朝日新聞が運営する本の情報サイト「好書好日」で読めるようになっている。 連載本文ももちろんいいのだが、この完結を記念して行われたトークイベントの模様が動画で公開されていて、これがめっぽう楽しい。 文学というのは、足の裏の感覚から立ち上るものを掴まえる行為だということがよく分かる。それに、都道府県ごとという括りがあれば、ヒット作もそうでないものもみな同じ土俵。切り口を変えることが偏見や固定観念を外し、自由な態度を与えてくれるということが、斎藤美奈子の快活でさっぱりした(でも嫌でない)語り口によってどんどん提示される。 *** 視聴してやたらに元気が出ました。サムネは「300冊の読書術」と扇情的な感じもありますが、内容はこれから連想されるような“スキル重視”のものではあ

心理臨床オフィス ポーポ
8月3日読了時間: 1分


魔女、人間になる――映画『ハムネット』(ネタバレあり)
映画『ハムネット』 を見ました。 *** イギリスの田舎(ストラトフォード)に住む農家の娘がジェントリ階級の息子と結婚し、子どもが生まれる。夫は食い扶持を得るためにロンドンへ。残された母と長女、双子の次女・長男は父の帰りを楽しみに、草花に親しみながら暮らすのだが、一家を悲劇が襲う。子の一人が亡くなってしまうのだ。この悲劇がその後、家族に取らせた手段とはなにか。それが劇作家・シェイクスピアの作品「ハムレット」誕生につながる——。 主演女優のジェシー・バックリーがアカデミー賞を獲得したこともあり注目される本作ですが、家族のすれ違い・エディプス的葛藤と創造性の関係・母との分離・女性同士の連帯・ 演じることによる喪の作業 など様々なテーマが重層的に含まれる物語でした。 *** 中でも私が面白いなあと思ったのは、ジェシー・バックリー演ずるアグネス。鷹を操ったり薬草を得たり、村では”魔女の娘”と噂される存在です。アグネスの母も魔女と呼ばれており、おそらく出産にまつわる何かで命を失っています。アグネスは母のように魔女として振る舞い、母の言葉を復

心理臨床オフィス ポーポ
4月18日読了時間: 5分


2026年が明けました
2026年が始まりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 *** 本日より、通常通り開室しております。休室の間にいただきましたお問い合わせにつきましては、順次ご返答いたしております。 *** 今年の初読了は、 北村紗衣・著『「名作」と友達になる 学校では教えてくれないシェイクスピア』(朝日出版社) 。男子高校生が、シェイクスピア研究者にしてフェミニスト批評家の集中講義を受ける!最後は高校生がシェイクスピア作品を批評するところまでたどり着きます。 映画初観了は溝口健二・監督『残菊物語』。個人が主体となるのに“家(イエ)”がどのように作用するのか。近代的な主体性を持った女性が男性とソウルメイト的バディになるとはどのようなことか。狙って観たわけではないのですが、実は上記のシェイクスピア本と似たようなテーマ性を持っているのではと思いながら鑑賞しました。 *** どうか良い年となりますように。

心理臨床オフィス ポーポ
1月5日読了時間: 1分


書店主になりました
書店主になりました。といっても、一つの店舗を持ったのでは(もちろん)なく、いわゆるシェア型書店のひと棚店主です。書棚の一区画をレンタルし、そこに自分の選定した書籍を並べ、販売することになります。 *** では、どの書店か?ということですが、東京は神田神保町にあるPASSAGE by all reviews というお店です。PASSAGE by all reviewsは、フランス文学者・文芸評論家の鹿島茂氏がプロデュースし、シェア型書店の先駆けとなった店舗です。 https://passage.allreviews.jp/ *店舗写真は公式HPより引用 *** ……で、大阪の心理療法家がなんでまた神保町に?ということなのですが、10月の出張帰りにたまたま映画を見に神保町に寄ったところ、素敵な店構えの書店が目に入り、吸い込まれ……それが他ならぬPASSAGE でした。(雨でイベントは中止でしたが)神保町まつりの日で賑わっていたこともありますが、かなりの誘引力。 そして店内に入って初めてシェア型書店であることに気づき、棚を眺めてびっくり。なん

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2025年11月28日読了時間: 3分


誰にとっても人生は突然――映画『カーテンコールの灯(あかり)』
現在上映中の映画 『カーテンコールの灯』 は、打撃を受けた人生がどのように再生していくのかを丁寧に描いた作品です。 *** 建設作業員として働いている男性・ダンが主人公。彼は作業中に激昂してしまい、それをたまたま見かけた女性に声をかけられ、地域の小さな劇団に誘われます。一...

心理臨床オフィス ポーポ
2025年9月1日読了時間: 6分


夏季閉室が明けました
8/4~6と夏期休室をいただいていましたが、現在は通常通り開室しています。 お盆の期間も開室していますので、お申し込みやお問い合わせがありましたらメール等でアクセスください。 *** わが夏帽どこまで転べども故郷 (寺山修司)

心理臨床オフィス ポーポ
2025年8月9日読了時間: 1分


夏顔と冬顔
夏と冬をまたいで 多肉植物・エケベリアは冬と夏とでは表情が変わって、これを「夏顔」「冬顔」と呼ぶこともあるそうです。 この写真で言うと、外側の方の長くてツヤツヤしている葉が夏に進展したもの、中央に近い毛が生えて立っている葉が10月以降にに育ったものです。秋から冬に育った...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年12月23日読了時間: 1分


育てたような気持ち
以前記事にしたエケベリア、順調に成長しています。葉の上に光るのは雨露。葉の層が重なっていき、いくら見ても見飽きません。根がたくさん張って鉢が狭くなったようでしたので、深い鉢に植え替えました。 なお、本記事タイトルは、敬愛する現代詩作家・荒川洋治の著作『読んだような気持ち』へ...

心理臨床オフィス ポーポ
2024年6月28日読了時間: 1分


mobilityの獲得と「私」の自由-須賀敦子『ユルスナールの靴』について
きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。 須賀敦子の著作『ユルスナールの靴』はこのような印象的な文章から始まる。ユルスナールとはベルギ...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年9月13日読了時間: 3分


1周年を迎えました
心理臨床オフィス ポーポを立ち上げてから、3月15日で一年が経ちました。 この一年は、どなたにとっても苦難の多いことだったでしょう。しかし本オフィスについて申せば、これまで教わってきたものを、自分が主体となって組み合わせ、有機的に生かしていくというなんとも言えない得難い経験...

心理臨床オフィス ポーポ
2021年3月16日読了時間: 1分


「これはなんだろう?」
上本町近辺の町をよく歩いています。 薄田泣菫の歌碑の写真を撮っていると、その陰から子どもが一人出てきました。首を傾げながら、写真を撮る私と歌碑とを交互に見ます。その子にとっては日常の遊び場、これが被写体として特別な対象になるということが不思議なのでしょう。...

心理臨床オフィス ポーポ
2020年11月9日読了時間: 1分
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